✿ 子宮がん(頸がん、体癌)と卵巣がん検診

                

(1)子宮頸がん

 子宮頸がんは20才から30才代の若い方に増えてきています。

 子宮頚がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることがわかっています。HPVは性交で感染するウィルスですが、70%の女性は一生のうちで一度は感染すると考えられるありふれたウィルスです。

 そのほとんどは病気を起こす前に身体から排除されますが、ごく一部の方でウイルス感染が持続して「前がん状態(異形成)」を経て「子宮頸がん」に進行してしまいます。

 ウィルス感染から発がんまでは5年から10年はかかるといわれており、検診をしっかりと受けることで子宮がんになる前に発見・治療できます。

 早めに発見すればその後の妊娠・分娩も可能な疾患です。

 

(2)子宮体がん

 子宮体がんは妊娠した時に胎児を育てる部分に発生するがんです。50才代にピークがありますが、成人女性の全ての年代で増加しています。私が学生のころ(40年くらい前)は子宮がんのうち頸がんが95%、体がんが5%の発生率と言われていましたが、子宮体がんが急速に増えてきています。

 子宮体がんの80~90%は女性ホルモン(エストロゲン)が発症のリスク因子と考えられています。エストロゲンの影響を長く受けているとリスクが高まります。例えば分娩経験のない人、月経不順、排卵障害、多嚢胞性卵巣症候群、閉経の遅い人、肥満、高血圧、糖尿病のある方、乳がんでタモキシフェンを使っている方、エストロゲンだけのホルモン補充療法を受けている方などで注意が必要です。子宮内膜ポリープや子宮内膜増殖症などの前がん状態を母地として発生し、比較的予後も良いものが多いです。

残りの10~20%の子宮体がんはエストロゲンの影響と無関係に発生します。前がん状態がなく突然がんができると考えられています。ホルモン治療に反応せず、予後も「エストロゲン依存性」に比べると良くありません。

 子宮体がんの症状では不正出血が最も多く、とくに閉経後に続く場合は要注意です。茶色いおりもの程度のこともあります。

検査の基本は子宮内膜細胞診です。細い器具を子宮の奥まで入れて検査するため多少の痛みを伴いますが大切な検査です。もし細胞診で異常が見つかれば組織検査をします。経膣超音波検査も診断の助けになります。

 治療法:手術が基本的な治療になります。状態によって化学療法、放射線療法、ホルモン療法などを併用あるいは単独で行う場合もあります。

初期の段階で見つかれば90%以上の方は治りますが、進行すると死亡率は高くなります。

すべてのがんに言えることですが、早期発見、早期治療が鍵となります。

 

 

(3)卵巣がん

 卵巣がんも増加している「がん」の一つです。食生活の欧米化、妊娠・分娩数の減少(排卵回数の増加)、喫煙率の上昇などが原因と考えられています。

 卵巣は子宮の両側にある親指くらいの大きさの臓器です。広い腹腔内にあるため、かなり大きくなっても無症状のことが多いのです。

 卵巣がんは現在でも死亡率の高いがんです。

 子宮がん検診の時に同時に、経腟超音波で卵巣の腫れをチェックすることをお勧めしています。