✿ 性感染症について

性交によって感染する病気を性感染症(STD、STI)といいます。

女性にとって性感染症は単に感染症としてだけでなく、不妊症を起こしたり胎児や新生児にうつしてしまったり(垂直感染)という問題を孕んでいます。また自覚症状があまりない病気も多いため、気づかないうちに進行したりパートナーにうつしてしまったりします。

性感染症に対する知識を持ち、予防することが大切です。

 

(1)性器クラミジア

   現在もっとも多い性感染症です。性交によりクラミジア・トラコマティスという

   菌がまず子宮頸管に感染して発症します。

   その後、菌は次第に奥の方に進入して子宮内膜炎→卵管炎→骨盤腹膜炎→肝周囲

   炎とお腹全体に拡がることもあります。

   自覚症状があまりなく、そのため発見が遅れると不妊症や子宮外妊娠、流産や

   早産を起こしやすく、垂直感染による新生児の結膜炎や肺炎の原因にもなり

   ます。

   またオーラルセックスによって咽頭にも感染します。

   子宮頸管や咽頭を綿棒でこすって細胞を取って検査をします。

   治療薬がよく効いて治りやすい病気ですが、何度でもかかる病気なのでパー

   トナーと一緒に治療をして、再感染に注意することが大切です。

(2)淋菌感染症

   クラミジアに次いで多い性感染症です。

   男性では排尿痛などの強い症状で見つかることが多いのですが、女性では自覚

   症状が乏しいため見逃されやすく、クラミジアと同じように子宮内膜炎→卵管

   炎→骨盤腹膜炎→肝周囲炎と拡がっていきます。

   また、不妊症や子宮外妊娠、流産・早産・新生児の結膜炎や肺炎の原因にも

   なります。

   耐性菌も増えてきており、以前効いていた抗生剤が効きにくくなっています。

(3)梅毒

   昔から良く知られた代表的な性病です。

   梅毒トレポネーマの感染によって起こります。

   感染から2,3週間で外陰部に固いしこりができ、やがて潰瘍になります。また、

   鼠径部に痛みのないリンパ節の腫れが見られます。(第1期)

   2,3ヶ月したころから身体全体に発疹(バラ疹)が見られます。(第2期)

   梅毒は昔に比べ大幅に減少した病気ですが、下のグラフのように2010年代に

   なって急激に増えてきており注意喚起されています。

   しかも、女性の増加率が高く、20才代の若い女性に増えてきています。

           性感染症のひとつである「梅毒」が大流行している。2016年度の報告数はすでに4077件(11月27日現在)で、4165件だった1974年以来、42年ぶりに4千件を超えた。 

 

           年齢分布別(2015年)に見ると、15〜24歳に関しては、男性よりも女性の方が報告数が多いことがわかる。

 

 

(4)HIV感染症/エイズ

   ヒト免疫不全ウィルス(HIV)の感染で起こる病気です。

   感染から発病までの潜伏期間が6か月から10年と長いのが特徴です。

   先進国のなかで日本だけが増加している性感染症です。

   発病すると、免疫力が著しく低下してその結果、細菌やウィルス感染(日和見感

   染)、悪性腫瘍から死に至ることが多い病気です。

   何よりも感染予防が大切ですが、早期発見によって発病をかなり遅らせることが

   可能になってきました。

5)性器ヘルペス

   単純ヘルペスウィルス1型、2型の外陰部への感染で起こる病気です。

   性交の3~7日後に外陰部に水疱ができて激しい痛みを起こしてきます。

   37~39℃の発熱や鼠径リンパ節の腫れを伴い、痛みのため排尿困難

   になることもあります。

   抗ウィルス薬の内服(場合によって点滴)と軟膏で治療しますが、症状が消えて

   もウィルスは深部の神経細胞に潜伏しており、体調が悪い時や疲労時などに再発

   を繰り返しやすい病気です。