✿ 更年期障害について

                    

更年期とは

 閉経を中心としてその前の5年間と、閉経後の5年間の計10年間を更年期といいます。

 平均的な閉経年齢は約50才ですので、ほぼ45才から55才の間が「更年期」の時期に相当します。

 この時期は女性ホルモンの急激な低下、家庭環境の変化(空の巣症候群など)、職場での責任の過重などが原因となり様々な身体の不調が起こることがあります。

 この時期に起こる様々な不調を「更年期症状」と言って症状の現れ方は個人差があります。この「更年期症状」が極端にひどく、日常生活にまで支障をきたしてしまう場合を「更年期障害」と言って治療の対象になります。

 

更年期障害の症状   

  更年期障害は人によって症状がさまざまです。おもな症状は

   のぼせ・ほてり(ホットフラッシュ)・発汗・めまい・頭痛・息苦しさ・喉のつかえ感・疲れやすさ・皮膚の乾燥感、イライラ・不眠・うつ状態、不安感・やる気が出ない・集中力の低下など多岐にわたります。

         ※更年期障害とよく似た、まぎらわしい症状もあり、中には、重篤な病気に発展する恐れのある症状もあります。自分で更年期障害と判断せず、まずは病院で正しい診断をしてもらうことが大切です。

 

更年期障害の治療開始の目安

 更年期かも?と思ったら、まずは婦人科を受診しましょう。

 ホルモンのバランスが更年期のパターンになっているかどうかは、血液検査をすれば分かります。 

 多少の体調不良があっても日常生活には全く支障がないのであれば、絶対に治療しなければいけないというものではありません。

 これからの人生をイキイキと生活するために、これまでの人生を振り返って改善すべき生活習慣がないか、ストレスを矯め込んでいないか等に気づくチェックポイントにしていただきたいと思います。

 より快適に過ごせるように工夫することが大切です。

 逆に、更年期症状がひどすぎて日常生活もままならない時は、早めに治療を開始した方がいいでしょう。

 

更年期障害の治療法

1.ホルモン補充療法(HRT)

 ホルモン補充療法(HRT)は、減少したエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充する療法です。 また、子宮を有する場合には、黄体ホルモン(プロゲステロン)を一緒に投与します。 

 保険適応で、自己負担も少なく、更年期障害の根本的な治療法として期待されてます。

 「エストロゲン」を補う方法としては、注射・飲み薬・貼り薬(パッチ剤)・塗り薬(ジェル剤)があります。一般的によく使われているのは飲み薬とパッチ剤です。パッチ剤の利点は、肝臓への負担が少ないという点ですが、2、3日ごとにシールを貼るため皮膚が弱い方はかぶれたり痒くなってしまうことがあります。 また、子宮のある方が「エストロゲン」だけを使い続けると子宮体癌になるリスクが高くなってしいます。そのため子宮のある方には、「エストロゲン」と一緒に「プロゲステロン」の飲み薬やパッチ剤を組み合わせて使います。 ホルモン補充療法の注意点としては、長く続けていると乳癌のリスクがわずかに高くなることや、薬による肝臓への影響が出ていないかを定期的にチェックする必要があることなどです。 なので、ホルモン補充療法中は特に、子宮がん検診・乳がん検診を年に1回は受けるようにしましょう。

  HRTで効果が期待される症状

   *  ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗などの血管運動系の症状の改善

   * 動悸や知覚異常など自律神経系の不調の改善

   * 閉経後骨粗しょう症の予防と改善

   * 泌尿器生殖器の粘膜が萎縮や乾燥して起こる萎縮性膣炎や性交痛などの改善

   * 悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やし脂質異常を改善する

   *不眠症状の改善

   * コラーゲンを増やし肌のハリや潤いの改善

 

2.漢方薬による治療

  ホットフラッシュ等の血管運動神経症状はエストロゲンの低下との関連が強くHRTがよく効きます。

  一方頭重感、頭痛、めまい、肩こりなどの不定愁訴には身体のバランスを正常にもっていく漢方療法が症状の改善によいといわれています。

  HRTが使用できない場合や、多彩な更年期障害の訴えを持つ場合にはまず試みられる方法です。

  ほとんどの漢方薬は保険適応があり、それほど高額になることはありません。

 

3.抗うつ薬・抗不安薬による治療

 うつや不安などの精神神経症状が主たる症状の場合や、HRTが無効な場合には抗うつ薬や抗不安薬が使用されます。

 このような場合専門のカウンセラーによるカウンセリングも効果的と言われています。

 治療を進めながら、人に話をしっかり聞いてもらうことで、からだと心のストレスを取り除いてあげましょう。

 

4.更年期のその他の治療 

 プラセンタ注射、サプリメント(イソフラボン由来のエクオール等)を使用することもあります。